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違法無効な配転命令拒否を理由とする懲戒解雇

Eさんは、40代半ばで転職して入社した会社のマーケティング部勤務で数年間経ちましたが、これまでの経歴で全く経験のない在庫管理部門への配転辞令が出されました。在庫管理部は現在の勤務地と異なる地方で、高校生の息子がいて、要介護の母を見ながら、共働きの妻となんとか現在の生活をしていたEさんにとってはとても受け入れられるものではなかったので、配転命令を拒否していたところ、配転命令を拒否したことを理由に懲戒解雇されてしまいました。
 懲戒解雇の理由となった配転自体に、どうしてもEさんでなければならない必要性が乏しく、畑違いのEさんを選んだことの背景として人事との間の以前のトラブルを理由とする嫌がらせ目的があったこと、Eさんの介護事情への不配慮などから、配転命令自体が違法無効であり、強硬的な懲戒解雇も違法無効と判断されました。
 Eさんは、解決金支払い、配転の撤回を内容とする和解が成立し、会社に復職できました。
説明
懲戒解雇は、懲戒処分としての解雇であり、懲戒処分の中で最も重い処分です。会社の金銭を継続的に着服し続けた(業務上横領)従業員を解雇する場合が典型的です。
懲戒解雇を有効と認めるだけの合理性及び相当性があるかによってその有効性が判断されます(労働契約法第15条及び第16条)。
そもそも、懲戒解雇が適法となるには、前提として、懲戒の事由(例えば、会社に著しい損害を及ぼしたとか、改善の見込みがないほどの勤務態度不良など)と懲戒の処分内容(例えば、けん責、戒告、減給、出勤停止、降格・降等級、諭旨解雇、懲戒解雇等)とを就業規則等に定めておく必要があります。
会社は、従業員に懲戒事由があった場合であっても、懲戒処分の中で最も重い処分であることから、すぐに懲戒解雇とすることには慎重でなければなりません。
事案では、配転命令の拒否をもって、改善の見込みがないほどの勤務態度不良や業務命令違反にあたるとされ、懲戒解雇がされました。しかしながら、そもそも、配転命令自体が違法無効なのであれば、従業員はこれに従う義務はありませんので、改善の見込みがないほどの勤務態度不良にも、業務命令違反にもあたりません。
このように懲戒解雇の理由とされている事実が本当に理由があるのか、解雇理由に本当に理由があったとしても、最も重い懲戒解雇とするほどに重大な事由であるのかといった点を主張立証していくこととなります。