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解決事例
普通解雇
(1)

外資系企業における試用期間満了時の解雇

外資系企業で勤務し、6か月の試用期間が設けられたAさんは、試用期間満了時に、勤務中の問題(部下への過剰な注意、上司からの指揮命令への数度の違背など)を理由に、試用期間満了に伴い、本契約を締結しないことを通知されました。
 本件における勤務中の問題の事実認定の不十分さや、Aさんの勤務実績の勤勉さを緻密に主張立証し、裁判所で、本件では、Aさんを試用期間満了時に本契約を締結しないことは、合理性及び相当性に欠け、違法無効であることが認定されました。
 Aさんは復職を希望しなかったため、解決金として、勤務期間を上回る6か月分の解決金により解決となりました。
説明
会社が従業員を普通解雇するときの典型的な理由の一つが、従業員の勤務成績や態度が不良で改善の見込みがないことです。勤務態度が不良の例としては、無断での遅刻・欠勤を繰り返し、注意しても一切改善されない場合や、日常的な業務指示・命令に従わない場合、配転や出向の命令に背く等の業務命令違反のケース等があります。
会社で勤務する従業員の勤務態度がケチのつけようがないことが一番かもしれませんが、それは現実的ではありません。
そのため、労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定め、解雇に客観的合理性及び社会的相当性が認められない場合、会社が解雇権を濫用したものとして、解雇を無効とすることを定めています(解雇権濫用法理)。
まず、客観的合理性の判断でポイントとなるのが、本件で解雇理由とされている勤務態度不良の事実(例えば、業務命令の違反)が本当に存在するか、また、本当に勤務態度不良の事実が存在するとしても、その事実が軽微で解雇にまで値しないのではないかという点です。
そして、社会的相当性の判断でポイントとなるのが、会社が従業員に対して、きちんと意見聴取や弁明の機会を与えたか、また、注意、指導や改善のための教育を行ったかという点です。
このような事実をていねいに確認して、会社が主張する解雇理由が認められないことをしっかり主張立証していくことになります。
本件でもまさに、Aさんの勤務中の問題についての事実が本当に存在するか疑わしいことや、一部本当に存在すると認められる事実が軽微であることや、Aさんの勤務実績の勤勉さ、Aさんに対する会社の注意、指導が適切に行われていなかったことなどを緻密に主張立証し、裁判所で、本件では、Aさんを試用期間満了時に本契約を締結しないことは、合理性及び相当性に欠け、違法無効であることが認定されました。
なお、試用期間は、雇用契約の期間がそれよりも長いことを前提として、使用者において労働者の能力・適格性を実地に観察して判定し、雇用契約を解約する権利が留保された期間です。今日の通説・判例は、試用期間の最初から雇用契約は成立していると解しており、試用契約と本採用後の雇用契約を別個の契約とは考えません。試用期間中や試用期間満了時には使用者が通常よりも簡単に解雇することができると誤解されている方もおられますが、必ずしも試用期間中や試用期間満了時の解雇だから簡単に有効と判断されるものではございません。
依頼を受けた弁護士がどれだけていねいに事実確認や主張立証をするかによって、事案の結果も大きく異なります。