解決事例
普通解雇
(2)
外資系企業における能力不足を理由とする解雇
- 外資系企業に転職で途中入社し、5年以上勤務してきたBさんは、前年の営業実績がよくないという理由で、解雇通告前に、PIP(Performance Improvement Program:業務改善プログラム)を設定され、PIPでの目標未達も理由とされ解雇されました。
Bさんは、会社にPIPのプロセスを踏まれた場合には、解雇を受け入れるしかないと当初あきらめていましたが、ご依頼を受け、会社側のPIPでの目標設定の不合理性や、業務改善指導の不十分さを丹念に主張立証し、本件解雇は、合理性及び相当性に欠け、違法無効であることが認定されました。
裁判上の和解が早期に実現され、解決金として、1年分の解決金により解決となりました。
なお、Bさんは、その後、別の外資系企業に転職されて、水を得た魚のようにお仕事に邁進され、キャリアアップされております。 - 説明
- 従業員の労働能力の欠如を理由とする解雇は、従業員の病気やケガによる就労不能の場合と、その他の能力不足、成績不良、適格性欠如の場合があります。
労働者の能力不足、成績不良、適格性欠如等により、労働契約上想定されている職務を遂行する能力に欠けると認められることは解雇の合理的な理由となりえます。もっとも、労働者の能力・成績・適格性等の評価は使用者によって主観的・恣意的に行われるおそれもあるため、解雇の有効性は慎重に判断される必要がございます。
外資系企業を中心に、解雇通告前に、PIP(Performance Improvement Program:業務改善プログラム)が設定され、そのプログラムでの目標を達成できたかによって解雇(または退職勧奨)の対象とするかを決められることがあります。
そして、PIPで設定された目標を達することができなかったとして解雇や退職勧奨が行われることがあります。
会社側がPIPのステップを踏んだ場合、改善教育や指導を行ったとして、解雇されても争いようがないと思われる方もいらっしゃいますが、必ずしもそうとは限りません。
労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定め、解雇に客観的合理性及び社会的相当性が認められない場合、会社が解雇権を濫用したものとして、解雇を無効とすることを定めています(解雇権濫用法理)。
会社側のPIPでの目標設定の不合理性(例えば、設定された目標が現実的ではないほどハードルが高い場合や改善教育としての機能を果たしていない等)が認められる場合などにおいては、解雇は、合理性及び相当性に欠け、違法無効であると認定されるケースもございます。
会社側がPIPのステップを踏んで解雇や退職勧奨を行ったからといって、すぐに諦める必要はございません。