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一部上場企業における勤務態度不良、冤罪ハラスメントを理由とする解雇

Dさんは、新卒で一部上場企業に入社し、約20年、順調に勤続してきましたが、配転後の上司との間で溝が深まっていき、部下との間でも意思疎通の問題が生じていたところ、短期間で複数回にわたり、部下へのハラスメント行為を理由とする警告や懲戒処分を受け、ついに解雇通知を受けました。
 訴訟では、Dさんによるハラスメント行為が存在したという具体的な事実が認められないこと、上司及び部下が結託しDさんのハラスメント行為の事実を虚偽に作出した可能性が大いにありうること、解雇通知に先立つ警告書及び懲戒処分の内容に不自然、不合理な内容があったこと等を丁寧に主張立証し、本件解雇は、合理性及び相当性に欠け、違法無効であることが認定されました。
 和解内容として、Dさんの復職が認められ、解決金の支払も得ることができました。Dさんは、復職後は配転し、新部署で躍進されております。
説明
懲戒解雇は、懲戒処分としての解雇であり、懲戒処分の中で最も重い処分です。会社の金銭を継続的に着服し続けた(業務上横領)従業員を解雇する場合が典型的です。
懲戒解雇を有効と認めるだけの合理性及び相当性があるかによってその有効性が判断されます(労働契約法第15条及び第16条)。
そもそも、懲戒解雇が適法となるには、前提として、懲戒の事由(例えば、会社に著しい損害を及ぼしたとか、改善の見込みがないほどの勤務態度不良など)と懲戒の処分内容(例えば、けん責、戒告、減給、出勤停止、降格・降等級、諭旨解雇、懲戒解雇等)とを就業規則等に定めておく必要があります。
会社は、従業員に懲戒事由があった場合であっても、懲戒処分の中で最も重い処分であることから、すぐに懲戒解雇とすることには慎重でなければなりません。
事案では、短期間で複数回のハラスメントを行ったとの事由をもって、改善の見込みがないほどの勤務態度不良やパワーハラスメント行為にあたるとされ、懲戒解雇がされました。
しかしながら、そもそも、懲戒解雇事由とされている、改善の見込みがないほどの勤務態度不良やパワーハラスメント行為の事実が存在しないのであれば、懲戒解雇事由が存在しないこととなり、懲戒解雇が無効と判断されます。
えてして会社側が調査不足等により、懲戒解雇事由の存在が疑われる案件が散見されますので、身に覚えがない懲戒解雇事由が提示された場合にはしっかり争うことが重要です。
このように懲戒解雇の理由とされている事実が本当に理由があるのか、解雇理由に本当に理由があったとしても、最も重い懲戒解雇とするほどに重大な事由であるのかといった点を主張立証していくこととなります。